においがしない
においがしない
においを感じる力は、私たちの日常生活の中で非常に大切な働きをしています。
食事の香りを楽しんだり、ガス漏れや焦げ臭さなどの危険を察知したり、季節や環境の変化を感じたりと、嗅覚は見えない情報を脳に伝える重要なセンサーです。
そのため、嗅覚が低下したり、全くにおいを感じなくなると、食事が味気なく感じる、料理の味が分からない、危険の察知が遅れるといったさまざまな問題が生じます。
特に「味がしない」と訴える人の多くは、実は味そのものではなく“においの成分を感じられない”ことが原因であるケースが少なくありません。
においの異常は風邪やウイルス感染の直後にも起こり得ますが、数日〜1週間以上続く場合は、単なる一時的な症状ではなく、鼻・副鼻腔・神経・脳などの異常が関係している可能性があります。
嗅覚障害は早期に治療を開始するほど改善しやすいため、症状を自覚したらなるべく早く耳鼻咽喉科を受診することが大切です。
ここでは、嗅覚障害の原因、症状の種類、検査、治療方法、改善のためのセルフケア、受診のタイミングまでを、耳鼻咽喉科専門医の視点から分かりやすくまとめます。
嗅覚は、鼻腔の奥にある「嗅上皮」に存在する嗅神経細胞がにおい分子をとらえ、嗅神経→脳の嗅球→嗅皮質へ信号を送ることで成り立っています。
この経路のどこかに障害が起こると、においが弱くなったり、全く感じなくなったりします。
嗅覚障害を引き起こす主な要因は以下の通りです。
ウイルス感染により鼻の粘膜が炎症を起こし、においの通り道が狭くなります。
鼻腔の炎症・膿・鼻茸(ポリープ)によってにおいの通り道が塞がって、においが届かなくなります。
粘膜の腫れが持続すると、においの通り道が狭くなります。
直接嗅神経がダメージを受けることで、長期間においが戻らないケースが多く報告されています。
嗅神経の断裂や脳の嗅覚中枢の損傷により嗅覚が低下します。
加齢とともに嗅細胞は自然に減少します。
嗅覚が初期症状として低下することがあります。
嗅覚は神経系の中でも非常に繊細で、炎症・むくみ・閉塞・神経損傷など多くの要素に影響されやすいため、正確な原因の見極めが必要です。
嗅覚障害と一口に言っても、症状の現れ方はさまざまです。
まったくにおいを感じない状態。
においが弱く感じる。香水や食べ物の香りが薄くなる。
本来のにおいとは違うにおいに感じる。
特定のにおいを別のにおいと誤って認識してしまう。
においがないのに、焦げ臭い・ガス臭いなどのにおいを感じる。
「味がしない」と感じる人の多くは、味覚ではなく嗅覚の問題によるものです。食べ物の味の約8割はにおいで感じ取っています。
これらが数日〜1週間以上続く場合は、耳鼻咽喉科での診察が必要です。
診察では、問診で症状の経過・きっかけ・変化を詳しく確認します。続いて内視鏡で嗅裂(においの通り道)を観察し、炎症・ポリープなどを評価します。
必要に応じて以下の検査を行います。
アリナミンテスト(静脈性嗅覚検査)
アリナミン注射後、においを感じるまでの時間、感じなくなるまでの時間を測定します。
血液検査でアレルゲンを調べます。
嗅覚障害は原因が多岐にわたるため、総合的な診断が重要です。
粘膜の腫れ・ポリープ・膿が嗅覚に影響します。
特に好酸球性副鼻腔炎は嗅覚障害が顕著で、再発しやすい疾患です。
アレルギー反応による粘膜腫脹でにおいの通りが悪くなります。
嗅神経・嗅上皮が障害されることで長期間においが戻らないことがあります。
物理的ににおいが遮られるため、においが低下する状態になります。
嗅神経損傷や脳の嗅覚中枢の損傷により嗅覚が障害されます。
アルツハイマー病・パーキンソン病の初期症状として嗅覚低下が生じることがあります。
嗅覚障害の治療は原因に応じて大きく異なります。
粘膜の炎症・腫れを改善し、においが通る状態を整えます。
アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎では特に有効です。
鼻茸や慢性副鼻腔炎による閉塞が原因の場合、手術で通気路を改善することで嗅覚の回復が期待できます。
再発しやすい好酸球性副鼻腔炎では、術後の薬物治療も併せて行います。
海外でも有効性が認められている治療法で、嗅神経の再生を促す効果があると言われています。
ローズ・レモン・ユーカリ・クローブなど数種類の香りを
1日2回・12〜24週間継続して嗅ぐことで、嗅覚刺激を与え続けます。
副作用が少なく、自宅で手軽に取り組めることがメリットです。
生活環境の見直しも嗅覚回復に役立ちます。
嗅覚障害を放置すると、次のようなリスクがあります。
嗅覚は時間が経つほど回復しにくくなるケースもあるため、早期治療が重要です。
数日〜1週間改善しなければ耳鼻咽喉科の受診をおすすめします。
多くは改善しますが、治療に数ヶ月を要することもあります。
嗅覚障害によるものが多いと考えられています。
医師の指示の範囲であれば安全性は高いです。
原因がポリープや副鼻腔炎の場合は回復が期待できます。
世界的に効果が認められています。
ウイルス感染・神経障害・副鼻腔炎などが考えられます。
あります。副鼻腔炎や構造異常が原因のこともあります。
アルツハイマー病やパーキンソン病の初期症状として現れることがあります。
大きく改善することがあります。
においがしない・弱い・変に感じるといった嗅覚の異常は、生活の質を大きく損なうだけでなく、危険察知の遅れにもつながります。
嗅覚障害には多くの原因があり、早期診断と継続的な治療が改善への近道です。
当院では、内視鏡検査・嗅覚検査・アレルギー検査・画像検査を組み合わせて原因を正確に診断し、薬物療法・手術・嗅覚リハビリを含む総合的な治療を行っています。
においの異常でお困りの際は、どうぞお早めにご相談ください。
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